「営業の経験を活かして、将来性のある業界に転職したい」——そう考えるビジネスパーソンの間で注目を集めているのが「IT営業」という職種です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が加速し、企業のIT化ニーズは年々高まっています。IT製品やクラウドサービスを提供する企業にとって、顧客の課題を理解し、最適な提案を行える営業職の存在は欠かせません。
IT営業の基本的な仕事内容や求められるスキル、未経験からの転職方法、年収やキャリアパスまでを網羅的に解説します。営業職の経験を武器に、IT業界という成長市場でキャリアアップを目指したい方は、ぜひ参考にしてください。
IT営業とは?今注目される理由と役割

IT営業とは、クラウドサービス、ソフトウェア、インフラ機器、システム開発など、IT関連の製品・サービスを法人顧客に提案・販売する仕事です。単なるモノ売りではなく、顧客の課題に合わせた「ソリューション営業」が求められるのが特徴です。
従来の営業職と比べて、IT営業が担う役割は多岐にわたります。例えば、
- 顧客の業務課題をヒアリングし、最適なIT製品を選定する
- 技術部門と連携しながら導入・運用までをトータルに提案する
- 導入後のフォローアップや改善提案も担う
なぜ今、IT営業が注目されているのでしょうか?その背景には、以下のような社会的変化があります。
DX推進の加速
多くの企業がDXを経営課題として掲げる中、クラウドサービスやSaaSの導入が急速に進んでいます。その過程で、ITに不慣れな顧客企業も増えており、「わかりやすく丁寧に提案してくれる営業」のニーズが高まっているのです。
営業職の価値が変化している
単に製品を売るのではなく、顧客のビジネス課題に寄り添い、中長期的な関係性を築く営業が求められるようになりました。IT営業はその中心に位置する職種といえます。
技術知識とビジネススキルの融合が武器になる
技術だけでなく、顧客折衝や課題解決力が求められるIT営業は、いわば“ハイブリッド人材”。他職種と比較しても、汎用性が高く市場価値の高いキャリアとなっています。
次章では、IT営業の具体的な業務内容や、どんなスキルが必要なのかを詳しく見ていきましょう。
IT営業の仕事内容と求められるスキル
IT営業の仕事は、単に製品を売るだけにとどまりません。顧客の業種や課題に応じて提案内容を柔軟に変え、技術部門やパートナー企業と連携しながら、導入・運用フェーズまでトータルにサポートします。ここでは、一般的な業務内容と、求められるスキルについて見ていきましょう。
IT営業の主な仕事内容
- 顧客ヒアリング・課題抽出:業務上の悩みや改善ニーズを聞き出し、課題を明確化する。
- 提案書・見積作成:製品の導入メリットを訴求する資料を作成し、費用や納期も提示。
- 社内外との調整:エンジニアや導入担当と連携し、技術要件のすり合わせを行う。
- クロージングと契約締結:商談をまとめ、契約や発注手続きを行う。
- 導入後のフォロー:利用状況のヒアリングや改善提案を行い、継続契約につなげる。
業種や企業規模によって営業スタイルも異なります。SaaSなどのクラウド系商材では、短期で商談を回す“インサイドセールス”が主流で、SIerや受託開発では長期的な“提案型営業”となることが多いです。
求められるスキルと人物像
IT営業に求められるのは、営業力だけではありません。以下のようなスキルがあると、転職市場でも高く評価されます。
- ヒアリング力:顧客の課題を正確に把握する力。
- 課題解決力:製品や技術の知識を活用して、ベストな解決策を提案する力。
- コミュニケーション力:顧客・社内エンジニアとの橋渡しができる対話力。
- ITリテラシー:用語や仕組みに対する基本理解。資格があると信頼性が高まる。
あると有利な資格・ツールスキル
IT営業に転職する際、以下のような資格やスキルを持っていると強みになります。
- ITパスポート:ITの基礎知識を持っている証明になる国家資格。
- Salesforce、HubSpotなどのCRM経験:営業管理や案件管理ができると即戦力になりやすい。
- TOEICスコア:外資系IT企業では英語力が求められるケースも多い。
ただし、未経験からの転職であれば「これから学ぶ姿勢」や「論理的な提案スキル」が何よりも重要です。
なぜ営業経験者がIT営業に向いているのか?
「IT業界に興味はあるけど、専門知識がないから不安…」という方も多いかもしれません。しかし実際には、IT営業は未経験者の転職先として非常に人気が高く、多くの営業職出身者がキャリアチェンジに成功しています。
IT営業の本質は、顧客の課題を解決する“提案型営業”です。そのため、すでに法人営業やルート営業の経験がある方は、以下のような強みを活かすことができます。
- ヒアリング力や交渉力:顧客のニーズを引き出す力はIT営業でも必須。
- 数字管理や提案力:売上管理やプレゼン資料作成のスキルは応用可能。
- 関係構築力:既存顧客との長期的な信頼関係づくりにも通じる。
つまり、IT分野の専門性はあとから習得できるものであり、それ以上に「ビジネス感覚」や「営業マインド」が重視されるのです。
転職成功のステップ

未経験からIT営業を目指すためには、以下のような準備が有効です。
- ITの基礎知識を身につける
まずは、ITパスポートの勉強を通じて「ITとは何か」を理解しましょう。無料のオンライン講座や書籍でも十分に対応できます。 - IT業界やプロダクトの理解を深める
興味のあるIT企業の製品情報を調べたり、SaaS・クラウド・セキュリティといった業界トレンドをチェックしましょう。 - 職務経歴書を“IT業界目線”にアレンジする
たとえば「提案営業で年間契約数120%達成」「課題ヒアリングによる商談成約率アップ」といった数字・成果の書き方が有効です。
転職エージェントの活用も有効

IT営業に強い転職エージェントを利用すれば、未経験OKの求人を紹介してくれるだけでなく、職務経歴書の添削や面接対策もしてくれます。求人票だけでは見えない“求められる人物像”を事前に教えてもらえるのも大きなメリットです。
ポイント:
書類や面接では「なぜIT業界を志望するのか」をロジカルに伝えることが重要。事前準備で差がつきます。
次章では、気になる「IT営業の年収」や「キャリアパス」について詳しく見ていきましょう。
キャリアパスの選択肢と年収の現実
IT営業は、未経験でもチャレンジできる職種でありながら、実力次第で高年収を狙えるキャリアパスが魅力です。ここでは、IT営業としての年収の目安と、その後のキャリアの広がりについて詳しくご紹介します。
年収の目安と報酬体系
IT営業の年収は、企業規模や商材の単価、営業スタイルによって大きく異なりますが、以下はおおよその目安です。
- 未経験スタート:350万〜450万円前後
- 経験3年以上:500万〜700万円
- ハイプレイヤー層(成果主義):800万〜1000万円超も可能
成果に応じたインセンティブ制度を設けている企業も多く、単価が高いSaaSやERP、クラウドインフラなどの領域では、少数の受注でも大きな成果報酬が得られる傾向があります。
キャリアの広がり
IT営業職は、営業としてのスキルを磨き続けることもできますが、以下のようなキャリアチェンジも可能です。
- 営業マネージャー:チームのKPI管理やメンバー育成を担うポジション。
- カスタマーサクセス:導入後の支援に特化し、継続的な利用を促す職種。
- ITコンサルタント:技術的知見と提案力を活かして、企業の業務改革を支援。
- プロダクトセールス責任者:マーケティング・企画部門と連携した戦略立案。
特にSaaS業界やスタートアップでは、営業職が戦略設計やCS(カスタマーサクセス)を兼ねるケースも多く、早い段階で裁量あるポジションを任されることもあります。
どの分野に強い営業になるかが重要
IT営業の中でも、特定の業界や商材に精通した“専門特化型営業”は市場価値が高くなります。たとえば、「製造業向けSaaS」「医療業界に強いITインフラ営業」など、顧客業種に詳しい人材は重宝されます。
キャリア設計のヒント:
“どの業界・どの商材に強いか”を意識して経験を積むことで、将来的に営業以外の職種や外資系企業への転職も視野に入ります。
IT営業で後悔しないための注意点とマインドセット
「IT営業ってかっこよさそう」「将来性がありそう」といった期待から転職する人も多い一方で、「思っていたのと違った」「専門用語についていけなかった」と感じてしまうケースもあります。
こでは、IT営業を目指す上で知っておきたい注意点と、成功する人に共通する考え方をご紹介します。
よくあるギャップとその原因
IT営業を始めたばかりの人がつまずくポイントには、以下のようなものがあります。
- 技術用語に戸惑う:エンジニアとの会話や資料に出てくるIT用語が難しく感じる。
- 提案内容の理解が追いつかない:製品が複雑で、自信を持って説明できない。
- 導入・運用フェーズでの責任感:「売って終わり」ではなく、その後の対応も求められる。
こうしたギャップの多くは、事前に仕事内容の理解や学習が不十分だったことに起因します。転職前には、業界の知識を最低限身につけ、自分が担当する製品・サービスの概要を調べておくことが大切です。
IT営業に向いている人の特徴
どんな人がIT営業として成功しやすいのでしょうか?共通するマインドセットには次のようなものがあります。
- わからないことを素直に聞ける人:最初からすべてを理解する必要はありません。疑問点を積極的に解決しようとする姿勢が重要です。
- 学び続ける姿勢がある人:ITは日々進化しています。トレンドに敏感で、勉強を継続できる人は強いです。
- 関係者と連携できる人:顧客・エンジニア・上司など、多様な関係者との調整が求められます。
環境選びも成功のカギ
未経験からIT営業に挑戦する場合は、教育体制や社内支援が整っている企業を選ぶことも非常に重要です。
「いきなり放置される」ような環境では、どんな優秀な人材でもパフォーマンスを出すのは難しいでしょう。
チェックポイント:
転職活動時には、企業の面接で「入社後の研修体制」「営業と技術部門の連携」について必ず確認しておきましょう。
IT営業は、スキルもマインドもバランスよく求められる職種です。しかし、それだけに成長幅も大きく、汎用性の高いキャリアを築くことが可能です。
まとめ|営業力をITで拡張する、新時代のキャリア
IT営業という職種は、「ITの知識がないと無理そう」と感じられがちですが、実は営業経験者にとって大きなチャンスを秘めたフィールドです。顧客の課題を汲み取り、最適な提案を行う——この営業の基本は、IT営業でもまったく変わりません。
むしろ、急速に進化するIT分野では、技術一辺倒ではなく「ビジネス視点」を持った営業人材が求められています。製品の特長を単に説明するだけでなく、「なぜ導入すべきか」「どう業務改善に貢献できるのか」を語れる営業こそが、顧客から信頼される存在です。
営業力 × ITリテラシー = 市場価値の高い人材
これまで培ってきた営業スキルに、最低限のIT知識を掛け合わせることで、あなたの市場価値は一気に上昇します。特に今後は、
- クラウドやSaaSといった定額制ビジネスの拡大
- 中小企業のDX推進ニーズの増加
- 多様な業界でのIT導入の進行
といった流れにより、IT営業の役割はますます重要になるでしょう。
今日からできる「次の一歩」
「いつかIT業界へ…」と漠然と考えているだけでは何も始まりません。まずは、次のような小さな一歩からスタートしてみてください。
- ITパスポートの学習を始めてみる
- SaaS企業の営業職の求人情報をチェックする
- IT営業に強い転職エージェントに相談してみる
小さな積み重ねが、半年後・1年後のキャリアを大きく変えます。
迷ったら、まずは動いてみること。
知識は行動の中で身につくものです。今の営業経験は、IT営業という新たなフィールドでも必ず活かせます。
営業力を“ITという武器”で強化し、DXの最前線で活躍できるキャリアを一緒に築いていきましょう。