副業人材”が本格始動!企業の業務委託活用が加速中|IT系フリーランス需要の現実

業界トレンド・ニュース

副業・業務委託の波が本格化する背景とは?

副業

かつては「正社員かフリーランスか」という二択だったIT業界の働き方。ところが近年、“副業”や“業務委託”といった中間的な働き方が一気に市民権を得ています。

背景にあるのは、企業と個人の双方における働き方への価値観の変化です。

まず企業側では、フルタイム人材を1人採用するよりも、プロジェクトに応じて専門スキルを持つ人材を「スポット」で活用する方がコスト効率が高いと考える傾向が強まっています。採用に時間や予算をかけるよりも、即戦力を柔軟に確保できる業務委託という形式が注目されているのです。

一方、個人側もコロナ禍以降、時間や場所に縛られないリモートワークの普及や、キャリアの複線化(パラレルキャリア)を志向する人が増えたことで、副業や業務委託の選択肢を自然に取り入れる人が増えてきました。

実際、フリーランスだけでなく、正社員として働きながら副業で業務委託案件に関わる人も急増しています。特にIT業界はスキルの汎用性が高く、個人の実力が可視化されやすいため、副業や兼業との相性が非常に良い分野だと言えます。

このように、「正社員にこだわらず、必要なスキルを柔軟に活用する」という流れは今後さらに加速していくと見られています。

企業が“常駐型SE”から“プロジェクト単位”に切り替える理由

かつてIT業界のエンジニア採用といえば「常駐型SE(システムエンジニア)」が主流でした。クライアント企業のオフィスに常駐し、常勤フルタイムで開発や保守業務に携わるスタイルが当たり前だったのです。

しかし、2020年代に入り、企業側のニーズは大きく変化しています。特に2025年現在では、常駐・フルタイム前提ではなく「プロジェクト単位」での契約形態を選ぶ企業が増加しています。

その理由は大きく3つあります。

  1. 採用リスクの軽減:フルタイム雇用には採用・教育・管理のコストが伴い、ミスマッチが発生した際のダメージも大きくなります。一方、業務委託なら一定期間・内容で成果を評価しやすく、柔軟な人材入れ替えも可能です。
  2. 専門スキルの即戦力化:生成AI、セキュリティ、Shopify構築などのニッチ領域では、社内人材がカバーしきれないケースも多く、必要なときに専門家を短期間でアサインする体制が望まれています。
  3. ハイブリッド勤務の定着:リモートワークが前提になったことで「物理的な出社前提の常駐モデル」が減少。SlackやZoomで完結する業務が多く、リモートでのアウトプット重視の評価文化にシフトしています。

また、IT部門に限らず、マーケティング・広報・人事などの職種においてもプロジェクトベースで業務委託を活用する動きが見られます。

これにより、企業は必要なフェーズに応じて人材を柔軟に確保でき、固定費を抑えながらも質の高いアウトプットが得られるというメリットを享受しています。

いま注目される業務委託案件の傾向とは?

2025年現在、IT業界で急速に増えているのが「業務委託(準委任)」や「副業OK」のリモート案件です。従来の開発・運用業務に限らず、幅広い職種やスキルセットで副業人材のニーズが高まっています。

特に注目されている案件ジャンルを以下にご紹介します。

  • PM/PMO(プロジェクトマネージャー・オフィス)案件
    SaaS企業やスタートアップを中心に、「社内にマネジメント経験者がいない」「IT専門知識を持つ進行管理が必要」といった背景から、週2〜3日のリモートPMO案件が増加しています。

    クライアントとの折衝・要件定義・進行管理などを任されるケースが多く、実務経験と高いコミュニケーション力が求められます。
  • Shopify構築やEC運用支援
    D2Cブランドや地方企業のEC化支援として、Shopifyの構築・カスタマイズやアプリ連携を行う案件も人気です。
    フロントエンドだけでなく、マーケ視点を持った構築経験がある人材は重宝されています。
  • SaaSプロダクトのマーケティング支援
    特にBtoB向けSaaSでは、SEO、ホワイトペーパー、MAツール運用、広告運用などの戦略立案・実行を外部人材に委託する動きが活発です。
    副業・業務委託として月20〜40時間の稼働で関わるケースが増えており、週1定例ミーティングのみで完結するスタイルも珍しくありません。
  • 生成AIを活用したツール開発
    GPT APIを用いた社内業務効率化ツールやチャットボット開発といった、先進領域の業務委託も増えています。
    特定技術に特化したエンジニアとのスポット契約が主流で、PoC(概念実証)を短期間で実装するための案件が多いのが特徴です。

このように、単なる作業委託ではなく、「自走できるプロ人材」へのニーズが高まっているのが業務委託市場の現状です。技術や実績のアピールだけでなく、課題解決への主体性や柔軟なコミュニケーション力が大きな武器になります。

業務委託として働くメリットと注意点

IT系フリーランスや副業人材として業務委託で働くことには、数多くのメリットがあります。しかし同時に、会社員とは異なる注意点やリスクも理解しておく必要があります。

業務委託のメリット

  • 自由な働き方ができる
    働く時間・場所に縛られず、自分の裁量で稼働時間を決められるのは業務委託ならでは。
    特に副業や育児・介護との両立、地方在住でも都市部の案件に関われる柔軟性は魅力です。
  • スキルに見合った報酬を得やすい
    実力次第で時給5,000円〜1万円以上の案件も多数あり、正社員の給与水準を大きく上回るケースも。
    自分の得意分野に特化して“選ばれる人材”を目指せます。
  • 複数のプロジェクトで経験値が高まる
    短期〜中長期で複数のクライアントに関わることで、業界知識やプロジェクトの幅が広がり、スキルの市場価値を高めることにもつながります

業務委託の注意点

  • 安定性に欠ける可能性がある
    業務委託契約はあくまで期間・業務単位であり、契約終了のリスクは常にあります。
    継続案件の確保や、収入の分散(複数案件同時受託)など、自分でリスク分散の工夫が必要です。
  • 自分で営業・交渉を行う場面がある
    特に直案件を狙う場合は、単価交渉・稼働条件の擦り合わせ・請求管理など、ビジネススキルも求められます
    営業が苦手な場合は、業務委託専門のエージェントを活用するのも有効です。
  • 社会保障や税金の管理が自己責任
    健康保険や年金、確定申告、消費税の課税対象など、フリーランスは自己管理が基本です。
    税理士や会計ツールの導入も検討して、収支をしっかり把握しましょう。

業務委託という働き方は「自由」と「責任」が表裏一体です。スキルだけでなく、自己管理力・継続的な情報収集・柔軟な対応力が長く活躍するためのカギとなります。

今後の展望:副業・業務委託市場はどう進化する?

2025年以降も、副業・業務委託を活用した柔軟な働き方はますます拡大していくと予想されます。とくにIT系業務では以下のような動きが注目されています。

  • 企業側の予算・体制の見直し
    多くの企業が正社員登用から外部プロ人材の活用へシフトしており、「フルタイムの人材確保は不要」とする流れが加速。特にSaaS業界、ベンチャー、自治体連携などの領域では、常勤よりも“必要なときに呼べる”人材の価値が高まっています。
  • スキル証明・評価制度の整備
    今後は、フリーランス向けのポートフォリオ評価や、業務委託人材専用の“リファレンスチェック”導入が一般化していく見込みです。
    企業もリスクを減らしたいと考えるため、信頼性・過去実績の可視化は必須となります。
  • 副業容認企業の増加
    従業員のスキル向上やキャリアの多様化を目的に、副業を推奨・容認する企業も増加中です。
    一部では「社外経験が本業にプラスに働く」として、副業が昇進評価にプラスになるケースすら見られます。
  • 地方や海外案件の増加
    地方自治体との連携プロジェクトや、グローバル企業の日本市場向け展開支援など、地理に縛られないプロジェクトも増加中。特にShopifyや生成AI関連の支援業務は、場所にとらわれない働き方の象徴です。

一方で、競争も激化しており「ただのITスキル」だけでは選ばれにくくなっています。自分の専門性や強みを打ち出せるかどうかが、今後の市場価値を大きく左右するでしょう。

副業・業務委託市場は今後さらに整備され、より多くの人が安心して挑戦できる環境が整っていくと期待されます。会社員かフリーランスかという二者択一ではなく、「どちらもできる人材」が評価される時代が、もう始まっているのです。

まとめ:副業・業務委託で広がるキャリアの可能性

副業や業務委託という働き方は、今や一部のフリーランスやエンジニアだけの選択肢ではありません。企業の働き方が「成果重視」「プロジェクト単位」へと移行する中で、会社員でも副業しながらスキルを広げることが当たり前の時代が到来しています。

今回の記事で紹介したように、Shopify構築やSaaSマーケティング、PMOといった専門案件は増加しており、柔軟なキャリア設計が可能になっています。

一方で、スキルの可視化や信頼性の担保、納期管理・契約条件の把握など、フリーランス的な責任感と自律性が求められる点も忘れてはいけません。

だからこそ、いま正社員として働いている人も、自分の得意分野を明確にし、副業・業務委託に備える準備が重要になってきています。

「いずれ独立したい」「収入の柱を増やしたい」「自分の力をもっと試したい」――そんな思いが少しでもあるなら、副業や業務委託という選択肢を前向きに考えてみてはいかがでしょうか。