AWSの「資格より実務」で求められるスキルとは?

- AWS認定資格は知識の証明であって、実務スキルとは別物
- 現場では「考え方」と「構成力」「コスト意識」が問われる
- クラウドの“使い方”ではなく、“活かし方”が重要
AWS認定資格、取ってみたけど…「現場で何すればいいの?」と感じたことはありませんか?
資格はあくまで知識の証明にすぎず、実務で必要なスキルはまったく別の視点から問われることが多いです。
実際、筆者のまわりでも「AWS SAAは持ってるけど、現場だと活かしきれない…」という声はよく聞きます。クラウドエンジニアとして本当に求められるのは、インフラの全体像を理解して、最適な構成を提案・実装できる力です。
現場でよく言われる「資格だけじゃ足りない」の本質
たとえば、「WebサービスをAWS上で動かしたい」というプロジェクトがあったとします。
そのとき必要なのは、単にEC2やS3を知っていることではなく、
- アクセス数や想定ユーザー数を踏まえたインフラ設計
- 月額コストを最小限に抑える構成案
- 可用性(止まらない仕組み)の担保
など、“クラウドの知識をどう活かすか”の視点なんです。

このあたりは、残念ながら資格試験の範囲外。だからこそ、「資格だけ持ってても現場で活躍できない」と言われがちなのです。
クラウド時代に重宝される“3つのスキル”
AWS実務に強い人は、以下のようなスキルセットを持っています。
- クラウドネイティブな構成力:EC2ベースではなく、LambdaやFargateなどを駆使して“持たない構成”ができる
- コスト最適化のセンス:「なんとなくでオンデマンド」ではなく、リザーブドやスポット、S3ライフサイクルなどで費用を圧縮
- セキュリティ設計力:IAMポリシーの最小権限設計や、ログ監視の導入が当たり前にできる
これらは、実際に手を動かして構築・検証していく中でしか身につきません。
「手を動かして覚える人」ほど、現場で頼られるようになります。

次章では、未経験者でもこれらの実務スキルをどうやって身につけていけるのか、その具体的な方法を解説していきます。
未経験でも現場で通用する人の特徴
「未経験からAWSを学びはじめました!」という方は多いですが、その中でも実際に現場で通用する人と、学習で止まってしまう人には、はっきりとした違いがあります。
未経験からAWSに取り組んだとき振り返ると重要なのは「覚えたサービスの数」よりも、「どう考えて、どう動いたか」の方です。
①「とりあえず触ってみる」スタンスがある

AWSはとにかく“触ってなんぼ”です。未経験でも、無料枠を使えばちょっとした構成を実際に作って試すことができます。
- EC2でLinuxを立ててみる
- S3にファイルをアップしてみる
- 簡単な静的サイトをCloudFront+Route53で公開してみる
こうした小さな「やってみた」の積み重ねが、資格にはない実務の視点を育ててくれます。
逆に、動画を見たりテキストを読んで満足してしまうタイプは、どうしても現場で“考えて動く力”が弱くなりがちです。
②「わからない」→「試してみる」が早い
実務では、ググっても正解がすぐ見つかるとは限りません。そんなとき、「とにかくやってみる」「エラーを読んでみる」という行動ができるかどうかが、大きな差になります。
最初は意味がわからなくても、エラーをコピペして検索して、何度か試していくうちに「あ、これがIAMの設定ミスだったんだ」とわかってくる。そのプロセスを経た人は、実務でも確実に強いです。
③「構成を説明できる」ができると強い
AWSで構築してみたことがある人の中でも、「なぜそう構成したのか」を言葉で説明できる人は、現場で重宝されます。

たとえば「なぜEC2じゃなくLambdaにしたの?」「S3の設定はなぜこうしたの?」と聞かれたときに、「コストとスケーラビリティを考慮して〜」と返せる人は、それだけで“設計の意図がある人”として見られます。
逆に「とにかく構築はしたけど…」という段階で止まっていると、業務では判断力や再現性が弱いと見なされがちです。
このように、未経験からでも“考えて行動する力”を養っていくことで、実務に強い人材に近づくことができます。
次のセクションでは、その“考えて動く力”を伸ばすためのステップを、具体的に紹介していきます。
【ステップ解説】AWSスキルを現場レベルに引き上げる方法
AWSを勉強し始めたばかりの方が「じゃあ、どうやって実務レベルに引き上げればいいの?」と悩むのは当然です。
ここでは、未経験からでも確実に“使えるスキル”へ近づけるステップを、具体的に紹介します。
ステップ① 無料枠で構築→壊すの繰り返し
まずは、とにかくAWSを自分の手で構築してみることが第一歩です。
AWSには12か月間の無料利用枠があるので、EC2やS3など主要サービスをノーリスクで触れます。
- 簡単な静的サイトをS3+CloudFrontで公開
- EC2にWordPressをインストールしてみる
- RDSでデータベース構築 → Lambdaで操作
最初はうまくいかなくて当然。でも、“壊して学ぶ”経験こそが実務につながる力になります。
ステップ② 構成図とアウトプットをセットにする
次にやるべきは、構築した内容を「言語化」「図解」すること。
実務では「何をどう作ったのか」をチームに共有する機会が多いため、この力が意外と重視されます。
- 構成図(Lucidchartやdraw.ioなど)でサービス間の関係を可視化
- QiitaやZennで構築手順・つまずき・学びを発信
- GitHubにCloudFormationやTerraformのコードを残す
こうしたアウトプットを残しておくと、「ポートフォリオ」としても転職時に強力な武器になります。
ステップ③ コストとセキュリティの意識を持つ
最後に、構築慣れしてきたら「ただ動く」だけでなく、「ちゃんと考えられている」構成を意識しましょう。
- オンデマンド料金で済ませていないか?(→リザーブド/スポットの検討)
- S3のバケットポリシーは適切?(→公開されていないか)
- IAMポリシーが全権限になっていないか?(→最小権限の原則)
コスト意識とセキュリティ意識は、実務で最も信頼されるポイントです。独学段階からクセづけておくと、現場で一目置かれます。


このように、「作って終わり」ではなく、“作ったあとに考える”習慣が、スキルを一気に実務レベルに押し上げてくれます。
次章では、現場で実際によく使われるAWSサービスを厳選して紹介します。
実務で役立つAWSサービス|これだけは覚えたい7選
AWSには200を超えるサービスがありますが、すべてを覚える必要はありません。
特に現場でよく使われるのは、いわゆる“定番”と呼ばれるサービスたちです。
ここでは、インフラ・アプリ開発・監視運用で実際に使われることが多い7つに厳選して紹介します。
① S3(Simple Storage Service)
静的ファイルやバックアップ、ログ保存など、さまざまな用途に使われるストレージサービス。
とにかく安くて高耐久なので、開発・運用問わず使い道が多いです。
② EC2(Elastic Compute Cloud)
仮想サーバを立ててアプリやミドルウェアを動かす、クラウドの王道サービス。
オンプレ時代の知識を活かせる場面も多く、「とりあえずEC2でやってみる」が初心者の登竜門です。
③ RDS(Relational Database Service)
MySQLやPostgreSQLなど、主要なDBをマネージドで利用可能。
自分でパッチ当てやバックアップ設計をしなくてよいのが魅力。小〜中規模サービスで特によく使われます。
④ Lambda
サーバレスでコードだけを実行できるサービス。トリガーを設定すれば、S3やAPI Gatewayとの連携でさまざまな自動処理が可能になります。
費用もミニマムで済むので、最近は“とりあえずLambdaでやってみる”構成も増加中。
⑤ VPC(Virtual Private Cloud)
ネットワークの基本設計部分であり、全サービスの“土台”になる重要な存在。
セキュリティやルーティングを理解する上でも、VPCの理解は必須です。
⑥ IAM(Identity and Access Management)
アクセス制御・権限管理の中心的存在。
誤って全開放設定(例:AdministratorAccess
)をつけないよう、最小権限の設計思想が問われます。
⑦ CloudWatch
ログの可視化・アラート設定など、監視に関する重要な機能を担うサービス。
「インフラは作ったけど、監視ができていない…」というのは実務では通用しません。
CloudWatch Logsやメトリクスの扱いに慣れておくと安心です。
この7つをベースに、「使う機会があったら調べて掘り下げる」スタイルでOKです。
まずは“最低限使える”レベルを目指しましょう。
最後の章では、今回紹介した内容をまとめつつ、次に踏み出すアクションをご提案します。
まとめ|AWSスキルは“考えて動く力”で差がつく
AWSの勉強を始めると、「どの資格を取るか?」「どこまで覚えるか?」といった悩みがつきものですが、実務で評価されるのは、“考えて動ける力”です。
- サービスを構築して壊してみる
- 構成図にしてアウトプットしてみる
- 料金やセキュリティまで意識してみる
このような姿勢が、結果的に「この人は実務でも任せられるな」と思ってもらえる一番の近道です。
特にこれからAWSエンジニアを目指す方にとって、「資格+実務スキル」のセットでキャリアの選択肢は大きく広がります。
ぜひ、本記事の内容をもとに、小さな一歩からでも“手を動かして試す”ことから始めてみてください。
そして、転職や副業を視野に入れる方は、AWSスキルを評価してくれる企業との出会いも意識してみてください。
経験の浅い方でも“伸びしろ採用”をしてくれる企業は必ずあります。
「実務で活かせるAWSスキルを、地道に育てる」このスタンスを大切にすれば、あなたもクラウドエンジニアとして大きな一歩を踏み出せるはずです。